さて、福井県の開業医である米沢英雄先生は、著書や名言を多く残した方ですが、ある時の講話で、
「吹けば飛ぶような、このちっちゃな生命(いのち)だけど、天地いっぱいがかけ合って成っている生命の重さに気づいたら、拝(おが)まないではおられない。この生命、大事に生きないではおられない」
と語られたそうです。私一人を生かしている背景に、一本の木を育てる背景に、天地総力をあげてのお働きがあるというのです。
山、川、谷、海、空、雲、太陽、月、それらの働きで、草という生命が生まれ、やがて花を咲かせる。そしてその草原に虫が活動し、それに連動して鳥や動物が活動する。そして私たちは山からしぼれた水をいただきながら、作物を育てたり、飲んだり、体を洗ったり使わせていただいている。
二千五百年前にお釈迦(しゃか)さまが発見されたこの天地の働きの真理(しんり)を「縁起(えんぎ)」といいます。一切のものが一点の例外もなくみな関わり合って存在しているというものです。
袋に入ったパンジーの種をそのままにしておくと、何も起こりません。袋を開け、空気という縁(えん)に触れ、土という縁に触れ、さらに水、太陽、愛情などの縁が加わることで、やがて見事な花を咲かせます。
やがて死すべき私たちであります。残念ながら例外はありません。しかしながら、自分の生命、木一本の生命の背景には全地球、全宇宙のお働きがあるという事実にも例外はありません。すべての地球の生命体は、みな連動し、人間に限っていえば、色々なものをいただいて、助けられております。
生命の尊さ、重さ、そして有り難さにめざめ、四季折々の花や草木を感じ、できるだけ穏やかに一年を過ごして参りましょう。万民万物(ばんみんばんぶつ)の調和と、皆さまのご多幸を祈念致します。あなたにとって善き一年でありますように。 合掌
(参考:『八正道(はっしょうどう)シリーズ〜正見(しょうけん)(青山俊董老師(しゅんとうろうし))※2』仏教伝道協会)
※1 法句経…お釈迦さまの生(なま)の言葉を423の短い詩の形でまとめられた経典『ダンマパダ』の漢訳名(古いインド語が中国語に訳された名称)で、ダンマは「法(真理)」、パダは「言葉」を意味する。
※2 青山俊董老師…尼僧(にそう=女性の僧侶)。愛知県専門尼僧堂堂頭を50年近く勤め今に至る。現在は大本山總持寺の西堂という重役も担い、九十超のご老体にむち打ち、修行僧へ熱のこもった講演を続けられる。人を救う題材ならば他宗はおろか他宗教も取り入れる程視野は広く、引き出しは多く、ひらがな言葉で話されて分かり易い。
