毎年枯れるはずの草花が、正月を迎えても枯れずに冬を越し、春を迎えることとなりました。
もう一つ例をあげます。正翁寺の墓地は、山の斜面にありますので、参道には手すりが設置されています。その手すりを私たちは、毎朝ぴかぴかに拭きあげています。しかし、この手すり拭きは、実は簡単ではありません。なぜなら、アリや虫がいるからです。私たちはそれらを殺さないように、息で飛ばしながら拭いていかなければなりません。その虫たちも、一年中いるわけではなく、冬になりますといなくなります。
再び地上に出て手すりに上がってくるのは、3月の初旬。虫がはい出る時期とされている「啓蟄(けいちつ)」を迎えるとと、見事に出てくるのです。いやはや、暦の真実性には驚かされます。
しかし、これはもう過去の話となってしまいました。2年位前からは、節分には手すりに虫がいるんです。つまり、虫がはい出る条件が、1ヶ月も早く整ってしまうんです。温暖化は、夏の気温や台風の大型化だけでなく、じわじわと暖かい時期が長くなっていく現象ともいえるでしょう。土や虫に直接触れる機会がない都会に住む研究者や政治家には分からない変化であります。
そのうち、蚊やハチが冬を越すことになり、そうなると生態系が著しく変わっていくものだと私は直感しています。都会住まいの研究者や政治家は頭で分析的に理解しているのでしょうけれども、自然といつも関わっている人たちは、自然からの警告を体で感じています。
この人類史上最大の問題を解決する上で、大切な事は三つ。畏敬と感謝、そして調和です。
1,畏敬…人類が大自然を恐れ、己の小ささを認識すること。私たちは小さいんです。
2,感謝…切っても切れない大恩である大自然への感謝と、150年前まで存在しなかった文明の一つ一つに感謝をすること。本当なら日が沈めば暗いんです。明るくできることはすごいことなんですが、本当は不自然なんです。
3,調和…地球の循環の範囲に私たちの生活を限ること。
横浜市戸部にある病院には、アフリカサバンナの躍動する動物たちの写真が至るところに飾られています。これは院長先生自らが撮影されたもので、コメントが書かれています。「弱肉強食のアフリカの世界は、生生しくむごい世界だと思っていたが、何回か足を運んでいくうちに気づかされたことがある。それは、この弱肉強食の世界は、実は調和であったんだ」と。
ライオンは百獣の王であるにも関わらず、シマウマを食い尽し、地球の循環の範囲を超えることまではしません。つまり、地球のはたらきに調和しているのです。そのことを、環境後進国の人々は、学ぶべきです。