さて、「コロナウイルスに打ち勝つ」とか「勝利しよう」。このようなメッセージが国内外問わずよく叫ばれていますが、皆さまはどのように考えますか?
本題に入る前に、皆さま「パリ協定」というものをご存じでしょうか。
近年の地球の温暖化は、自然現象説もありましたが、最新の報告では、人為的な可能性が極めて高いと言われています。つまり、私たち人類の活動が原因で地球の温度は上がり、生態系への影響や、異常な気象状況を作り出してしまっているというのです。
このままのペースで行くと、2100年には地球の平均気温は、4.8℃上昇すると言われており、平均気温が4℃を超えてしまうと、今当たり前に食べている多くの食べ物が生産できなくなってしまうといった、危険な暗い未来を迎えてしまうことになるのです。
そんな最悪な状況を迎える前に、みんなで行動を変えて地球の温度の上昇を、産業革命前から最低でも2℃未満に、できれば1.5℃未満に抑えて、明るく楽しい未来を迎えましょう。といって2015年に、すべての国の合意でできた約束が「パリ協定」です。
この約束は、非常に高いハードルと言われていますが、世界中の人々が、今回のコロナウイルスのパンデミック(世界的流行)で、往来の封鎖や行動の自粛を余儀なくされたことで、温暖化ガスの排出量が大きく減って、このままのペースで行くと、2020年の温暖化ガス排出量は、パリ協定の目標値である、7.6%削減を上回る「8%削減」という試算が打ち出されたのです。(6/19日本経済新聞)
ただし、7.6%削減の状態を2030年まで続けましょうという目標ですから、大変な話です。しかし、人類がどのように行動すればどれほどの削減になるのかピンとこない数値でしたが、具体的に知ることができました。すでに、イギリスでは空が明るくなって澄んできていると言われています。
観光産業や航空や運輸に関わる方々には、心苦しい結論となってしまいますが、いくら億千万円あっても作物や動物がいきいきと生きて、それをいただかなければ私たちも生きていくことはできません。これは子どもでも分かる論理です。WWF(国際自然保護基金https://www.wwf.or.jp)
がうったえるように、「化石燃料は世界を豊かにしてくれない」という事実を、人類はいよいよさとらなければいけません。
仏教には、「知(ち)足(そく)」という、人類を豊かにしてくれる素晴らしい教えがあります。文字どおり、「足るを知る」ということです。電車や車があるだけでもすごいと思いませんか。離れた人と話ができるだけでもとんでもないことだと思いませんか。
5Gだ宇宙だという前に、自分を取り巻く産業革命以降の先人たちの汗水のつまった素晴らしい文明に、そして、美しい四季折々の自然、その自然が作り出す空気、食べ物の源である大地や海に対して、すごいなあ。ありがたいなあ。と、事実を実感することが大切です。
人類目線で見ると、「コロナに打ち勝つ」となりますが、地球目線で見ますと、「これ以上温暖化ガスを止めるにはどうすればいいのかなあ。どうすれば人間たちは、自分たちの首をしめていることに気づいてくれるのかなあ」と知恵をしぼるのではないでしょうか。
『諸々(もろもろ)の苦悩を脱せんと願えば、まさに知(ち)足(そく)を観(かん)ずべし。知足の法は、即(すなわ)ちこれ富(ふ)楽(らく)安穏(あんのん)のところなり。
知足の人は、地上に臥(ふ)すと雖(いえど)もなお安楽(あんらく)なりとす。不知(ふち)足(そく)の者は天堂(てんどう)に所(しょ)すといえども、また心にかなわず。
不知足の者は富めりといえどもしかも貧し、知足の人は貧しといえどもしかも富めり。』遺(ゆい)教(きょう)経(ぎょう)(お釈迦さま亡くなる前の最後の教え)より
願うところは、この功徳によって、すべての生きとし生けるものが幸福に暮らせますように。
そして、さとりの光が現れますように。 合掌
(「IPCC」記述参照)https://www.jccca.org/ipcc/ar5/wg1.html )