・「表紙のことば」たまちゃん
変わらない景色。山や川、草や花。
同じように見えている花も去年とは違う花。
この一輪の命が精一杯生きるように、
私たちも全力で生きていきたい。
宇宙の大きな視野を考えると、
花も私も生きることに大差はないのだから。
・「是」酒井大岳(P,30)
「ぜ」と読みます。「正しい!そのとおり!」と相手をたたえる時に言います。
師の問いに弟子が答え、その答えが禅の道に適(かな)っている時、師は「是!」と言うのです。
あるお坊さんと桜の花の散るのを見ていました。わたしが「いさぎよく散りますねえ」と言ったら、そのお坊さんが「雅(みやび)ですね」と応(こた)えたのです。
これには意味があります。桜はちる、うめはこぼれる、牡丹(ぼたん)はくずれる、椿はおちる、これは「雅のことば」と言い、平安時代の女流歌人たちが大切にしていた表現上の心得なのです。
そのお坊さんはこのことを知っていたので「雅ですね」と言われたのです。わたしはすぐ「是!」と言い、二人は手を取り合って大きく笑いました。
・「その命を思って」橋悦堂(P,10)
四度目の三月十一日が来ます。
仙台市葛岡墓園管理事務所の一室。
そこには身元不明の方や引き取り人がいない方のご遺骨が今も安置されています。
毎月その場所に、県内の宗教者が集まって東日本大震災の供養を行います。
目の前にあるご遺骨は、今は亡きその方の生きてこられた刻(とき)を詰め込んでいる。
人として生を得、己が人生を歩み、
四苦八苦をその身に受け、
震災という難に遭い、その生を全うし、
姿を変え、ここに存在している。
お位牌やお墓も遺骨と同じく、亡き人の人生を刻み、命を宿したものと感じられるから大切に扱われるのでしょう。
ご遺骨やお位牌は先に行かれた方の命の尊さを教えると共に、今を生きる私たちの命もまた尊ぶべきものと教えてくれます。