2017年06月19日

爪が伸びると切るように 欲の皮も 時々切って 捨てねばならない

 仏教では、この「欲望」は放っておくと、どんどん伸びていき、心を患(わずら)わし、悩ます結果となってしまいますよと教えます。まるで、木を枯らすツルを放っておいたら、いつの間にか巻き付いて樹木が枯れてしまうようなもの。

 このやっかいな欲望を、定期的に剪定(せんてい)する方法、つまり、苦しみの原因を摘んでいく方法が「八正道(はっしょうどう)」という、八つの「人の道」を歩んでいくことですよと、お釈迦さまは説かれました。

 八正道は、文字どおり八つの道からなります。@正見(しょうけん・適正な見解)、A正思(しょうし・適正な分別)、B正語(しょうご・適正な言葉)、C正業(しょうごう・適正な行為)、D正命(しょうみょう・適正な生活)、E正精進(しょうしょうじん・適正な努力)、F正念(しょうねん・適正な心構え)、G正定(しょうじょう・適正な心の統一)。
 
 すべてに「正」の字が付き、すべての訳に「適正な」とあります。お釈迦さまの教えの原点は「中道(ちゅうどう)」です。欲望のおもむくままの快楽主義でもなく、不眠、不休で断食(だんじき)するような苦しい修行でもなく、両極端を離れて、自分を程々に、適正に制御(コントロール)する八つの道が、苦しみの原因を摘み取る唯一の方法なのですよとお示しです。

 A「正思(しょうし)」〜G「正定(しょうじょう)」を習慣化して、自分になじませていきます。そうして@「正見(しょうけん)」の状態に近づけて、悪い束縛から少しずつ解放させていきます。これがお釈迦さまと重なった正しく、安らかで、いきいきとした生き方となります。


 @正見(しょうけん)…苦しみの原因をよく観察して、原因と結果を明らかにする、迷いの雲が晴れた見解。
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 A正思(しょうし)…悪い欲望が起こることを恐れ、怒りやねたみや恨みによる争いをしないように思念(しねん)する。

 B正語(しょうご)…嘘や両舌(りょうぜつ)、悪口や綺語(きご)などによって起こる災いがないよう、ことばを慎(つつし)む。

 C正業(しょうごう)…殺生(せっしょう)、盗み、邪婬(じゃいん)など、行いを慎む。

 D正命(しょうみょう)…怠惰(たいだ)・歓楽におぼれた生活、過酷な生活、邪な生活を捨てて、道理に適(かな)った生活をする。

 E正精進(しょうしょうじん)…悪心が起きぬよう、善心が起きるように、善心が起きたら増長するように努力する。

 F正念(しょうねん)…身心の平静を常に心がける。常にお釈迦さま(又は仏さま)を念じる。

 G正定(しょうじょう)…行動と思考を統一させる。坐禅。

 いかがでしょうか。突然すべてを変えることは難しいでしょう。年齢、環境、性別などそれぞれの状況の中で、ゆっくりと、一つずつ、着実に中道に近づけていきましょう。大人になってからお箸の使い方を直すのが苦痛なように、小さな頃から少しずつなじませておくと簡単かもしれません。

 苦しみの原因は、伸びきった欲望です。お釈迦さまは、欲望を捨て去れとは説いていません。欲望に執着してしまうと、迷いや惑(まど)いが生まれるから、その「執着を制御」しましょうとお示しです。時々、坐禅をしたり、法話を聞いたり、あるいは体を動かしたり、静かな自然環境でのんびり過ごしたり、定期的に欲望を剪定をして、心を軽やかに、安楽にいきましょう。

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【参考文献:『仏典のことば』 田上太秀】


 
posted by 正翁寺 at 17:17| 日記