私たちは病気になれば病気のことしか考えられず、失敗したら失敗したことにふりまわされ、愛が憎しみに変わったら憎悪の他は何も見えなくなり、心が重く沈み、疲れてしまう。
ちょっと目を上げて空を見てごらん。ちょっと高いところへ登って遠くを見てごらん。ちょっと角度を変えて違う方向から見てごらん。近づく春の足音がきこえるよ。出口はいっぱいあるよ。失敗は成功のもと、といわれるじゃないか。
愛は深いほど一つまちがうと憎悪に変わる、ということは、憎悪が愛に変わる可能性もあるということ、愛憎は一つの心の表裏だということではないか。
冬の寒さが木に年輪をきざみ、その年輪が木を守り、また、木目(もくめ)として木を飾る。常夏(とこなつ)の木には年輪らしきものは、きざまれない。
人も悲しみ苦しみのお陰で、深みのある人間になることができる。思うようにならないことこそ、「私に年輪きざんでいただけるとき」と喜んでゆきたいものである。
「人の一生は重荷(おもに)を負(お)うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。
不自由を常(つね)と思えば不足なし。こころに望みおこらば困窮(こんきゅう)したる時を思い出すべし。
堪忍(かんにん)は無事長久(ぶじちょうきゅう)の基(もと)、いかりは敵と思え。
勝つ事ばかり知りて、負くること知らざれば害その身にいたる。
おのれを責めて人をせむるな。
及ばざるは過ぎたるよりまされり。」(徳川家康)
がんばろう日本!
【参考文献】
『八正道(はっしょうどう)シリーズ〜正見(しょうけん)』
青山俊董