
・禅のことば
「葉落ちて根に帰す」酒井大岳
「はおちてねにきす」と読みます。
木々たちは枯れ葉を根元に落とし、土に返してみずからを生かす栄養とします。この繰り返しが木々たちの命を循環させているのです。
ところが、雑木林を歩いて行くと、木の根元にはさまざまな木の葉が集まっていることに気づきます。木枯らしの吹くなかで木々たちは互いに枯れ葉を交換し、より新鮮な栄養素を作り合っている。
この自然を観察していると、争わず、分け合って生きていることに教えられます。
枯れ葉に学んで、人間も互いに良いものを交換し合って生きてゆきたいものです。
・特集
「挑む」(P,1)
現在、大学卒業者の四人に一人が非正規雇用。たとえ正規の社員になれても、三十代、四十代で引きこもりになる人が約二割を占めるという。果たして彼らが、正規雇用や都市での生活にこだわる必要があるのだろうか。
もっと柔軟に自分の生き方を考えたときに、別の選択肢も出てくるのではないだろうか。自分が生きていく世界をもっと自由に考えてもいいのではなかろうか。
「皆が皆、会社員になる必要はありません。人間関係に疲れ、家に引きこもってまで都会生活をする必要もありません。人間相手ではなく、自然を相手に自己を発揮する手立てもあります。自然を相手にのびのび暮らす方法もあります。要は、自分の生き方をもっと柔軟に考えるべきなのです」
「全国的な動きとして、山に木を植える運動があります。樹木を植えることで山の養分が増え、その養分が川を流れて田畑を潤し、海に注ぐことで海の養分も豊かになる。その養分を食べて魚介類は美しく育つ、というのです。植林の結果、山崩れなどの災害を防ぐことにもなる」
現在は、国も人も、共にカラを破ることが求められている。今まで通用してきた古い価値観(=カラ)を破って、新しい価値観に向かって挑むときが来ている。
・
「犯罪の件数の減少と治安の悪化」青木千恵(P,10)
八月に公表された今年版『警察白書』によると、12年の刑法犯の認知件数は、戦後最多だった02年の半数以下に減っている。犯罪の認知件数は減少の一途だが、内閣府の世論調査では、国民の8割以上が「過去10年で治安は悪化したと思う」と答えている。
12年の児童虐待の検挙数は99年以降で最多だった。いじめに起因する事件数は87年以降で最多。家庭内暴力(DV)やストーカーの件数も増えている。
犯罪件数の減少は「みえる犯罪」が減ったということで、「みえにくい犯罪」は減っていず、「悪意」のようなマイナス感情を自制できない人は、むしろ増えているのかもしれない。
しかしこの「悪意」という感情を、人は誰でも持っている。法に触れなくても、悪意は世の中を息苦しくするし、ときに犯罪を誘発する。自制を習慣づけて努めなくてはならないが、そうできない人もいる。
愚か者の「みえにくい犯罪」で簡単に崩れるような人間関係を築いてはいけない。信頼できる人とのつながりを大切にしたい。